
4. 商用CALSの導入
4−1 商用CALS導入のステップ
CALSの概念は、米国の国防総省で開発されただけあって、国家や企業の組織化やシステム化においては極めて優れた内容を持っている。すなわち、ビジョンと戦略を明確にトップが示せば、あとはCALSのルールをきちんと守ることによって、権限委譲されたそれぞれの現場が、独自に構築したデータベースであっても容易に統合化が出来る。つまり管理も制御も自立分散することが可能となるので、規制されているということを意識させないで、現場の独自性を生かしながら自由に業務を推進出来るのである。
国内で商用CALSの導入を考える場合に、次のような導入のステップを一般論としてまず理解しておく必要がある。
第1ステップ
グローバル・ビジネス戦略の決定(トップダウン)
第2ステップ
教育とトレーニングを併用した学習とBPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)の実施(トップダウン)
第3ステップ
外部企業とのインタフェースの共通化をべースに社内のディジタル環境化の推進
(トップダウンからボトムアップ)
第4ステップ
データベースの共有化と統合化(トップダウンからボトムアップ)
日本の企業の80%以上は現在、縦型組熾になっていると言われている。したがって、BPRによる最初の改革の対象はこの点であり、R/E(リエンジニアリング)活動によって、水平自立分散型組織に向けて権限委譲しながら組織変革を開始する必要がある。このような変革は大企業にとっては極めて多くの障害があり、むしろ中小企業の方が短時間で変革を達成出来るといわれている。そして、これからの産業界における大企業と中小企業の住み分けの中で、中小企業の果たす役割としては、量産プロセスで貢献するか、マスカスタマイズ・プロセスで貢献するかである。量産プロセスでは品質のよい製品を大手量産企業の満足する価格で早く製造する生産技術が必要であり、マスカスタマイズ・プロセスでは各々の顧客の要求する仕様にあわせて、キット化されたハード、ソフト製品を最終製品にまで組み上げていく高度な総合企画開発設計技術力が必要である。このような製造プロセスはグローバルな環境の中で実施されるので、商用CALSのインフラは必須になってくる。とくにキー・テクノロジーであるEDIFACT(商取引情報交換手順の標準規格)、SGML(世界標準のハードやソフトに依存しない入間以外でも扱えるドキュメント用の言語)、STEP(製品モデル・データ交換標準規格)をべースとした電子取引システムの構築は必須である。なかでもインターネットを利用した愛発注業務や製造技術情報交換システムは、最低限構築する必要がある。この場合、企業のビジョンとCALSのルールを守ることを企業のトップが明確に全社に向けて宣言すれば、後は各部門ごとに始めていけば良いのである。つまり「大きく叫んで小さいところから実行する」ということである。そしてこのようなインフラが整ってくれば、企業の生産活動に必要な次のような機能、
(1)セールス業務
(2)マーケティング業務
(3)経営企画管理
(4)企画開発、設計業務
(5)技術管理業務
(6)財務経理業務
などは一社で全てカバーしなくても企業活動は十分に遂行出来るようになるのである。
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